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法律相談

〜 菊地克保弁護士 〜

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1.家主が借家の敷金を返還してくれません
2.飲食店の責任
3.土地を買いましたが土地と公道の間に第三者の土地が存在して困っています
  (動機の錯誤)
4.店舗の賃貸を所有者が契約直前に断ってきました(契約締結条の過失)
5.相続と銀行預金の払戻
6.住宅の欠陥について
7.賃借人が家賃未払いのまま行方不明となりました
8.自分の商号を使って営業をさせていた者が事故をおこしていまいました
  (名板貸人の責任)
9.商品売買代金の回収方法
10.従業員の競業避止義務について
11.従業員兼取締役の退職金
12. 退任取続役の責任
13.商工ローンからの借入
14.私道の通行権
15.定期借家制度
16.民事再生法について
17.所有者の変更と保証金の返還

1 家主が借家の敷金を返還してくれません

☆問い
私は、5年前から賃貸マンションンを借りていましたが、移転することになり、部屋を明け渡し、入居の際に預けていた敷金16万円の返還を求めました。ところが、家主から、カーペット、壁紙の張り替え、畳の表替え、室内の清掃などの修繕費として30万円かかると言われ、差額の14万円を逆に請求されました。この14万円は支払わなければならないのでしょうか。

☆答え
最近、敷金返還を巡るトラブルが、多発しております。その原因は、家主の側でリフォーム費用を借主の負担にしようと企図しているところにあります。しかし、敷金というのは、借主の家賃不払、その他の損害を担保するために、家主が預かり、明け渡しのときには、不払い額等を差引いた残額を返還しなければならないものなのです。また、5年間も居住すれば、通常の使用をしていても、ある程度の損傷や汚染は避けられません。したがって、とくにひどい使い方をした場合(例えば、犬などの動物を飼っていて、ひどく汚したとき、幼児がいて、落書きをしたり、ふすまだのを破った場合)などを除いては、借主が修繕費用を負担する必要はありません。このことは、仮に、契約書の中に「退去の際には物件を原状回復した上で明け渡す」などの条項が入っていても同様です。また、「カーペット、壁紙の張り替え、畳の表替えに要する費用は借主の負担とする」との条項が入っていたとしても、その修繕費を敷金から差引くことは許されません。ただし、「借主の負担は経年劣化によるものを含み、退去時のリフォームもこれに該当する」などの条項がある場合で、しかも入居時に、家主から、その条項の説明が十分になされている場合には問題があります。経年劣化というのは例えば畳が自然に日焼けするようなことをいい、どんなにていねいに使っていても、生じるものです。また、北海道内では、このような条項の入ったものは、ほとんど見受けませんが、借りる側としては、こうした点にも注意をすることが必要でしょう。家主の側とすれば、この条項を入れて回収をはかるのが得策ということになります。

 

2 飲食店の責任

☆問い
私は60歳になる主婦です。先日、友人と2人でデパートに行くと、前から欲しかった毛皮のえり巻がありましたので、1万円で買いました。ちょうど昼でしたのでデパート近くの食堂に入り、食事をしました。食事を終え、友人が食事代を払いにレジに行き、私はトイレに行って戻ったところ、えり巻がなくなっていました。店の人に聞くと、店員が他のお客さんの忘れ物と思い、そのお客さんに渡したということです。私は、食堂の経営者に弁償してほしいと言いましたが、持っていったお客さんが返しに来るでしょうなどと言って、取り合ってくれません。弁償してもらえるでしょうか。

☆答え
 最近は、せちがらい世の中で、渡す店員も店員ですが、自分のものでないのに、それを受け取っていった客にもあきれかえってしまいます。
 このような場合には、店の経営者に損害賠償の請求ができます。商法第594条には次のような条文があります。わかりやすく言えば「旅館、飲食店、公衆浴場など客の来ることを目的とする店の経営者は、客が預けた物を減失したり、破損した場合には、不可抗力であることを証明しない限り、損害賠償の責任を負う。客がとくに預けた場合でなくとも、店の中に携帯してきた物品が、経営者または使用人の不注意により滅失したり、破損したりしたときも損害賠償の責任がある。店内に責任を負わないとの告示をしたとしてもその責任を逃れることができない」という内容です。したがって、この食堂の経営者もこの法律にあてはまりますので、従業員のしたミスが不可抗力であると証明しなければ、責任を逃れることはできません。
 損害賠償の額は、通常は、買ってしばらく使うと、大きく値が下がりますが、ご質問の場合は、まだ買ったばかりですので、デパートのレシートを示せば、買った金額を請求できるでしょう。ただし、気をつけなければいけないのは、すぐ次の第595条に次のような特則があります。それは「貨幣、有価証券、その他高価品については、客がその種類及び価額をはっきりと告げて経営者に預けたとき以外は、経営者は、その責任を負わない」とされていることです。
 これは、例えば公衆浴場にいくとき、ダイヤの指輪を持っていって脱衣場に衣類と一緒に入れておいたところ、指輪が盗まれたという場合には、経営者は責任を負わなくてもよいということです。このような常識はずれのことをする人は、法律でも保護されないという趣旨です。でも、ご質問の1万円程度のえり巻は高価品とはいえないでしょう。

 

3 土地を買いましたが土地と公道の間に第三者の土地が存在して困っています(動機の錯誤)

☆問い
私は、転売する目的で、公道に面した宅地を買い、手付金として売買代金の2割を支払いました。ところが、その宅地と公道との間に第三者の土地が帯状に存在しておりました。これでは、転売することはできませんので、契約を解除し、手付金の返還請求とそれと同額の違約金の支払を請求したいのですが、できるでしょうか。

☆答え
動機といえば、和歌山のカレー毒物混入事件で犯行の動機が何かが話題となっておりますが、これは刑事事件の話です。ところが、民事事件においても動機が問題とされることがあります。それが動機の錯誤というものです。売買などの契約において契約の内容に思い違い(これを錯誤といいます)があり、その錯誤があることによって契約をする目的が達せられないような重要な錯誤であれば、こちらに重大な過失のないときは契約の無効を主張できます。ただし、契約の動機についてだけ錯誤のあるときは、その動機が契約のときに表示されていなければ無効を主張できないというのが、これまでの裁判所の考え方です。
 ご質問の場合も、質問の方は、宅地を買うことが契約の目的であり、転売するというのは動機と考えられますので、そのことを契約のときに相手に話しているかどうかがポイントとなります。それと、契約に先立って、現地を調査したり、図面を見たりすれば、第三者の土地があることが容易にわかるのに、こうしたことをしていなかった場合には、たとえ動機を話していたとしても、重大な過失があるため、無効は主張できないことになります。したがって、慎重な事前の調査をし、しかも転売するということを相手方に話している場合には、契約の無効を主張することができます。ただし無効ということは、はじめから契約がなかったことになるだけですから、手付金は返還してもらえますが、それ以上の違約金の請求はできないことになります。

4 店舗の賃貸を所有者が契約直前に断ってきました(契約締結条の過失)

☆問い
 私は、美容院を経営しており、支店を出すため、ビルの一部屋を店舗として賃借したいと思い、ビルの所有者Aに申し入れたところ、Aも賃料や敷金の説明をし、2週間後に契約書を交わすことを承諾しました。その後も、改装工事の打ち合わせや什器備品の打ち合わせをAとの間で進めておりました。Aは、その後、奥の部屋も借りてほしいと申し入れてきましたが、経営的に成り立たないので断わり、Aも了承しました。ところが、契約書を作成する直前になり、Aは、自分が使いたいからと態度を急変し、契約の締結を拒否してきました。
 私は、賃借できるものと信じて、什器備品を買い入れ、新規に従業員を雇い入れ、電話を引くなどしましたが、これらの費用をAに請求できないでしょうか。

☆答え
 本件は、賃貸借の契約書が作成されておらず、契約に基づく請求は問題があります。しかしながら、契約の締結の交渉にあたっては、相手方に対し、誠実に対応しなければならないという取引上の信義則があります。ビル所有者のAには、契約の成立を信じている質問者に対し、不測の揖害をこおむらせてはならない注意義務があります。したがって、ご質問の場合に、Aが、賃貸借契約を拒否したことは、この信義則上の注意義務に違反していることになり、不法行為となるといえます。これを学問的に契約締結上の過失といいます。
ですから質問者が、店舗を貸借できるものと信じて買い入れた什器備品などの代金全額、新規に雇用した従業員に支払った給料、設置した電話の名義変更後の基本料金などを損害としてAに請求できることになります。本件の場合、Aが一緒に借りて欲しいと申し入れた奥の部屋は、日中、日当たりが悪くなかなか借手がつかない状態で、Aにすれば、再三にわたり質問者に借りてほしいと申し入れたのですが、断わられたため態度が変わったようですが、裁判例においても同様のケースで所有者の責任が認められています。契約を結んでいなくても、このように責任を認められることがありますので、貸す側としては、十分な注意が必要です。

5 相続と銀行預金の払戻

☆問い
 半年前に、私の父が亡くなりました。父はA銀行に1,000万円の預金をしており、相続人は母と4人の子ですが、相続人間で争いが生じ、話し合いがつかないので子の一人である私は、A銀行に行き、自分の取り分つまり全体の8分の1の金125万円の払戻しを求めたところ、銀行では、相続人全員の合意または遺産分割協議書の提出がないと払戻しはできないといって、これを拒否しました。どうしてもだめなのでしょうか。

☆答え
 相続をめぐる争いは、身内のことだけに、骨肉の争いと言われるほど、解決が困難なことがよくあります。本件においては母が2分の1、4人の子が残り2分の1を平等に分けた8分の1の相続権を有しております。相続人間で話し合いがつかず、遺産分割協議書の作成ができない場合、従来の銀行実務では、ご質問のとおり払戻しを拒否することが一般的に行なわれておりました。
 ところが東京高裁(平成7年12月21日)及び東京地裁(平成8年2月23日)の両判決で、預金のように分割できる債権は、相続により法律上当然に分割され、したがって、銀行は、各相続人の相続分に応じて預金の払戻しに応ずべき義務があるという結論を示しました。後者の東京地裁の判決では「預金の払戻請求をした相続人の一人が、一定の根拠を示して、相続人の範囲、遺言がないこと、遺産分割の協議が整っていない事情等について説明をしたときは、銀行などの金融機関としては、その人の相続分について払戻請求に応ずべきである」としております。これらの判決によれば、ご質問の方の場合には金125万円の払戻しを請求できるということになります。
 ただし、この両判例とも、いわゆる下級裁判所のもので、最高裁判所の判例ではありませんので、今後、変更されることがあるかもしれませんので、注意が必要です。また、銀行側としても、相続分を越えて支払ってしまったり、あるいは真の相続人でない人に払戻してしまった場合に責任を取らされるおそれがありますので、戸籍謄本や住民票、印鑑証明書などを要求してくることになると思われます。

6 住宅の欠陥について

☆問い
 私は、1年半ほど前に、自宅を新築しましたが、使っているうち窓や戸の閉まりが悪くなり、そのようなことに詳しい知人にみてもらったら、欠陥住宅ではないかと言われました。建築業者に対し、どのような請求ができるのでしょうか。

☆答え
 この場合、建築業者に対し、欠陥の補修を請求できます。しかし、建物工事の場合は、欠陥を理由に契約解除はできません(民法第635条但書)。また、ご質問では欠陥をいつの時点で発見したのかわかりませんが、民法では、木造建物は5年以内であれば追求できるとされているのです。
 ところが、実際の工事請負契約書では1年に短縮して書いてある場合が多いので、その場合には、建ててから1年以上して欠陥が発見されたときには、追求できないことになります。もし1年以内に発見されたのであれば、直ちに内容証明郵便で欠陥の補修または損害賠債の請求を出すべきです。まだ、工事代金の未払いがあるときは、それと相殺できます。
 ご質問とは離れますが、中古住宅あるいは建売住宅を買って、欠陥が発見された場合には、請負ではなく、売買の規定が適用されますので、買ったときに発見できなかった欠陥は、「隠れた瑕疵」といい、欠陥を発見したときから1年以内に契約の解除または損害賠償の請求ができます(民法第570条、566条)。ただし、契約を解除できるのは、購入するときに買主が欠陥があることを知らず、しかもこの欠陥があるために、中古住宅あるいは建売住宅としての目的を達することができないような大きな欠陥の場合に限定されています。なお、売買契約書の中に、「現状有姿」で売買するという条項が入っていても、販売業者は以上の責任を免れません。いずれのケースにおいても、契約書の内容が大事ですので新築にしても、中古住宅あるいは建売にしても契約書の内容は入念に確認しなければなりません。

7 賃借人が家賃未払いのまま行方不明となりました

☆問い
 私はアパート業を営んでいます。賃借人の1人が、3か月位前から行方不明となり、家賃も支払っていません。部屋の中には荷物が残っており、別の人に貸すこともできない状態です。家主としては、どのような方法を取れるのでしょうか。

☆答え
 近年の不景気と道義心の欠如から、このような不誠実な借主が多く、ご質問のように家主が困ることがよくあります。賃貸借契約書に「1回でも賃料を滞納した場合には契約を解除できる」という条項があっても、契約を解除する手続が必要です。これまでは、相手が行方不明の場合に契約を解除するためには、簡易裁判所に「公示による解除の意思表示」という方法を取らなければならず、これに一定の手続きと時間を要し、それから明渡しの判決を求め、判決に基づいて明渡しの強制執行をするという方法しかありませんでした。平成10年1月1日施行の民事訴訟法の改正により、明渡しの裁判の訴状に解除の意思表示が記載されていれば「公示による解除の意思表示手続」をする必要がなくなりました。この点では少し早くできるようになりました。 そして、明渡しの判決を求める際に、滞納している家賃を支払えとの判決も同時に求めておき、その判決に基づいて残っている荷物を差押競売し、滞納家賃に充当して残っている荷物を処分することになります。こうした手続には、大変な手間がかかるので、契約書の中に「賃貸借契約の終了後に家屋に取り残された動産類については所有権を放棄する」という条項を入れておくことがあります。こうした条項のある場合に、家主の方で勝手に荷物を処分できればよいのですが、裁判所の考え方は、このような条項は有効ですが、家主としては、やはり強制執行による正式な建物明渡し訴訟の手続を踏んだうえで、残っている荷物の搬出や処分をすることを許していると思われ、家主がこのような手続きを取らずに勝手に処分することは、後で、賃借人が現われて、損害賠償を求められることにもなりえますので危険です。このように考えていきますと、家主としては部屋を貸す際に、十分注意しなければならず、疑わしい場合には、しっかりとした保証人をつけてもらうしかないようです。

8 自分の商号を使って営業をさせていた者が事故をおこしていまいました
   (名板貸人の責任)

☆問い
 当社は、特許を取って、ある商品を製造販売しております。数年前に、本州のある男性から、ぜひとも当社の商品を取り扱いたいというので、当社の営業所長という肩書の入った名刺の使用を許可しました。ところが、この度、その男性が、営業中に交通事故を起こし、相手方を死亡させてしまい、任意保険に入っていなかったため、被害者の遺族は、その男性が差し出した当社営業所長という名刺を根拠に、当社に対し、損害賠償の請求をしてきました。支払いに応じなければならないのでしょうか。なお、当社では、その男性からは一切の手数料、許可料等をもらっておりませんし、給料も払っておりません。

☆答え
 商法第23条によりますと、「自己の氏名または商号を使用して営業をなすことを他人に許諾した者は、自己を営業主なりと誤認して取引をした者に対し、取引によって生じた債務について、商号を使用した人と連帯して弁済の責任を負う」とされています。この意味は、取引の第三者が、名義(商号)を貸している会社を真実の営業主と誤認して、名義を借り受けている人と取引をした場合、外観を信頼した第三者が不測の損害を受けないよう保護して、取引の安全を期するということです。したがって、名義を借りている人が、取引によって相手に迷惑をかけた場合は、正常な取引の場合はもちろんのこと、その商品を用いて取込詐欺を行なったような不法行為による損害賠償についても、名義貸人の会社は連帯責任を負うことになります。  しかしながら、ご質問の、交通事故のような、取引と全く関係のない行為については、例えば、その商品の契約に行く途中であったような場合であっても、責任はないとされており、最高裁の判例もあります。その理由は、外観に対する信頼を保差しなければならないという形ではないからです。したがって、例えば、車輌に大きく、会社の商号をプリソトして走っていたというようなときには、責任を生ずるおそれがありますので、十分の注意が必要です。

9 商品売買代金の回収方法

☆問い
 当社は、A社に商品を売り、A社はその商品をB社に転売した後で、経営に行き詰まり、裁判所に自己破産申請を出して倒産してしまいました。B社に問い合わせたところ、まだA社に売買代金を支払っていないということです。売買代金を回収する方法はないのでしょうか。

☆答え
 このところバブル崩壊の余波で道内でも大型の倒産が続いております。そのため商品を売り渡し、まだ代金を回収しないうちに倒産され、回収が困難になるというご質問のケースが増えております。このような場合、売った商品がまだA社に残っていれば、A社の承諾を得て、その商品を引揚げるなどの方法が取れますが、本問のように既に転売されてしまい、商品がA社に残っていない場合には、この方法は取れませんそこで活用されるのが商品(動産)売買代金の先取特権です(民法第311条6号)。この権利は、担保物権ですので、他の債権者に優先して回収をはかることができるのです。そして、本問のように商品が転売されている場合には物上代位といって、A社のB社に対する売買代金債権を直接押えることができるのです。具体的な方法としてはA社を債務者(A社が既に破産している場でも可能で、その場合には破産者となり、破産管財人が相手となる)、B社を第三債務者として、この両社に対し、債権差押命令を出すよう地方裁判所の債権執行係に申立てます。裁判所では、その商品が間違いなくA社からB社に転売されていることさえ証明できれば、差押命令を出し、これによりA社がB社に代金の取立をすることも、B社がA社に支払うことも禁じられます。また、差押命令申立と同時にB社に対し、陳述の催告という申立もしておくと、B社は2週間以内に裁判所に差押えた債権があるか否か、弁済の意思はあるか否かなどを回答しなければなりません。そして、民事執行法によれば、差押命令がA社に送達された日から1週間を経過したときは、B社から債権を取立てることができるとされています(第155条)。ですから前述の回答書に弁済の意思があるとされていればB社と交渉して支払ってもらい、支払を受けたときは裁判所にその旨の届出をすればよいのです。もし、B社で支払を拒否するようなことがあれば、債権の転付命令あるいは取立命令を別に取って強制執行しなければなりません。

 

10.従業員の競業避止義務について

☆問い
 当社は、就業規則で退職後3年間は、当社と競業する仕事をしてはならないと規定しております。ところが、先日退職した従業員が、当社と同業の会社を設立し、当社の従業員のときに知り合った当社の顧客と次々に取引し、当社に重大な損害を与えております。これを防止し、損害賠償請求することはできないのでしょうか。

☆答え
 わが国は資本主義経済体制を取っており、職業選択の自由は憲法第22条でも保障されております。したがって、退職後に同種の業務を禁止する特約(これを競業避止義務といいます)を規定することは、制限の程度によっては、営業の自由を制限するものとして、公序良俗に反し、無効とされます。ご質問の3年間という規定が有効かどうかは、もう少し、業務の内容例えば特殊な技術あるいは知識を必要とするものなのか、あるいは秘密に関するものなのかなどを知る必要がありますが、これらが重要視されるような業務でしたら、3年間程度であれば、有効とされるでしょう。したがって、規定に基づいて、業務の執行停止を求めることもできますし(仮処分申請)、損害賠償の請求も認められることになります。
 それでは、仮に、こうした競業避止義務を規定に入れていないときは、こうしたことができないのかについても、一応触れておきます。商法では、会社の取締役については、競業する取引をするためには、取締役会の承認を要するとされています(商法第264条、有限会社法第29条)。したがって、一般の従業員にもこの趣旨は類推して適用されるでしょう。しかし、これらはあくまでも在職中の規定であり、退職後まで拘束することには無理があります。したがって、業務の内容が、競業されたら困るような会社では、就業規則などで、あまり長くない期間の競業避止義務を定めておく必要があるでしょう。

 

11.従業員兼取締役の退職金

☆問い
 私は、平成元年4月にA株式会社に入社し、平成8年には平取締役に就任しましたが、その後も従業員としての仕事を担当しており、今年9月に退職しました。A社には、10年間勤続した従業員に対し、本給の6カ月分の退職金を支給する退職金規定があるので、退職時の本給50万円の6カ月分として300万円の退職金を請求しましたが、会社側は、定款に取締役の退職金に関する規定がなく、退職金についての株主総会の決議もないことを理由に支給を拒否しました。私は、退職金をもらえないのでしょうか。

☆答え
 株式会社の取締役の退職金は、報酬と考えられ、その支給・額について定款の定め又は株主総会の決議によらなければなりません(商法第269条)。しかし、株式会社では、平取締役が従業員を兼務することが認められており、その場合には、従業員としての退職金の支給は、退職金規定に定められていれば、認められるというのが最高裁の判例の考え方です。
 ご質問の方は、平取締役に就任後も、従来の業務を担当していたのですから、支給を受ける権利があると考えられます。仕事の内容の他に、雇用保険に加入していること、中小企業退職金共済事業団の積立を継続しているという条件が加われば、より従業員性が強まります。
 ただし、退職金の額は、従業員としての本給の6カ月分であり、その認定方法としては、例えば、同期入社で取締役になっていない従業員の本給が基準とされ、その6カ月分に限定されるため、300万円が認められるとは限りません。

 

12. 退任取続役の責任

☆問い
 私は株式会社の代表者をしておりますが以前に当社の取締役だったAが、当社に在職中に知った社外秘の内部情報を雑誌の記者に提供し、当社の秘密が雑誌により公表され、当社の業務に大きな支障をきたしました。Aは、私と対立し、1年ほど前に取締役を辞任しております。Aに対し、当社の損害を請求することができるのでしょうか。

☆答え
 現代社会は、コソピュータなどによる情報化が進んでおり、会社経営にあたっても情報管理に気を使わなければならないようです。ところで、会社の取締役は、法令及び定款の定めならびに株主総会の決議を守り、会社のため忠実に職務を行なう義務を負うと定められています。(商法第254条の3)。したがって、会社の秘密情報を守る義務(守秘義務)を負うことになります。しかしこの規定は、あくまで、在任中の取締役についての定めですので、ご質問のように、退任した取締役にも、この義務があるかどうかが問題となります。会社の定款などで退任したときも守秘義務を負うことを定めてあれば義務を負いますし、辞任したときにそのような約束をしていれば問題ありません。しかし、代表者と喧嘩別れをしたように思われますので、そこまでは約束していないと思います。  こうしたケースの裁判例では、信義則により一定の範囲で守秘義務を負うとされた例が何件かあります。したがって、ご質問の場合も、雑誌の記事がAの提供した情報によるものという証明ができれば、Aに対し損害賠償の請求ができるでしょう。損害額としては、その秘密が漏れたことにより、会社の売上あるいは利益が減少した額ということになりますが、証明はなかなか難しいと思います。この他、会社の信用あるいは名誉が傷つけられたとして、慰謝料の支払を認めた裁判例もあります。いずれにしても情報の管理、守秘は企業にとって重要な位置を占めるようになっており、一層、気をつけることが必要でしょう。

13.商工ローンからの借入

☆問い
 当社では、7年ほど前から、いわゆる商工ローンのA社から借入れをしております。最初は300万円でしたが、次第に増えて、現在では1400万円にもなってしまい、毎月の利息の支払も苦しくなってきました。保証人には迷惑をかけるわけにはいきませんし、このままでは倒産のおそれもあります。

☆答え
 このところ、いわゆる商工ローンの悪質な取立て、根保証の問題点などが連日のようにマスコミ報道され、代表者が国会に喚問されるなど、大きな社会問題となっております。A社のやり方は、ご質問の方の7年位前は、貸付元本の手形を振り出させそれに対する利息を毎月支払わせるというものですが、手形を振り出しているものですから、不渡りをおそれる経営者は、A社から言われるままに、その決済資金をA社から借りるというくり返しをし、金額も貸付額を増やそうとするA社のやり方に応じてしまうため、あっという間にふくれあがってしまうのです。A社だけでなく、商工ローンは、どこも年30%を超える高利を取っておりますので、1400万円ですと月々の利息が40万円前後になるため、それを支払うことは中小企業にとっては非常に困難になります。
 ところが、商工ローソの利息は、利息制限法に違反する高利のため、ご質問の方のように約7年位取引を続けておりますと、この法律を適用して計算しますと、過払いの状態となり、逆にA社に過払金の返還請求ができることになることが多いのです。ことにA社の場合は、子会社を作って、保証料や事務手数料という名目で、毎月、金銭を支払わせますので、ますます過払い額が多くなります。ただし、A社では、この計算方法に対し、手形ごとに新たな貸付けだから別々に計算されるべきという主張をし、この方法ですと過払いにはなりません。また子会社の保証料も利息ではないと主張しており、裁判所の判断も、二とおりにわかれております。とにかく、一刻も早く弁護士に相談すべきケースです。

14.私道の通行権

☆問い
 私は、5年ほど前に、市道に面していない分譲地を住宅とともに買い居住しております。市道までは、幅3.5メートルの道路が通じており、その道路は、私と同様に分譲地を買った人達との共有地となっております。この道路は、もとは幅1.5メートルしかなかったのですが、分譲される時に、3.5メートルに拡幅されたのです。そのため、分譲以前から付近に住んでいるAさんは、それまでは近くの土地を借りて駐車していたのですが、道路が広くなったため、自宅内に駐車場を設けて、道路を自動車で通行するようになりました。この道路は、付近の住民も歩行に利用しており、子供も遊んでいるため、自動車で通行すると危険です。Aさんの自動車による通行をやめてもらうことはできないのでしょうか。

☆答え
 道路の通行をめぐるトラブルは、非常に多く見られます。建築基準法42条1項で、道路とは、特定の場合を除き、幅4メートル以上のものをいうとされております。ところが、同じ42条2項で、一定の場合には、幅4メートルに満たない道路でも道路とされています(いわゆる「みなし道路」)。そのため、こうした「みなし道路」の通行、しかも主として自動車による通行をめぐって、裁判が次々と起こされております。
 最高裁は、このような「みなし道路」であっても、道路が現実に開設されていること、通行することが日常生活上不可欠の利益を有すること、通行することにより、道路所有者に著しい損害を与えないことなどを条件として、通行する権利を認めております(平成12年1月27日判決)。しかし、この条件を満たしていない場合には、通行が認められないという判例も数多く出ています。
 本間の場合には、従前は、幅1.5メートルで自動車が通行できなかったのに、たまたま付近が分譲され道路が拡幅したため通れるようになったこと、付近の住民や子供が使用しており、自動車の通行は危険性があることなどの事情を考えれば、自動車の通行を禁止することが認められるケースと言えます。ただし、歩行通行は禁止できません。
 このように、ケースにより裁判所の判断も分かれますので注意が必要です。

15.定期借家制度

☆問い
 私は、10年ほど前から、店舗兼住宅として建物を借りております。この度、家主から、契約を切り替えてほしいと言われました。とくに契約期間が切れるわけではないのにこのような申出があり、どうしたらよいか迷っております。

☆答え
 平成12年3月1日から、借地借家法が一部改正され、定期借家制度が新設されました。改正前は、契約期間が定められている場合に期間が満了しても、家主が更新を拒絶して契約を終了させるためには、正当の事由が必要とされ、正当の事由がなかなか認められず、家主が、いつになれば建物を明渡ししてもらえるのかが不安なため、貸したがらないという問題がありました。そのため、定期借家制度が立法されたのです。この法律によりますと、公正証書などの書面を作って契約すれば、契約の更新がない賃貸借をすることができます。但し、家主の方では、あらかじめ契約期間が満了となれば更新されずに、契約が終了することを記載した書面を交付して説明しなければならず、書面の交付か説明のどちらかがなかった場合は、更新しないという特約は無効とされ、正当な事由がなければ契約は更新されます。
 定期借家契約が成立しますと、契約期間が1年未満のものは、期間満了とともに当然に終了します。1年以上の期間を定めた場合は、期間満了の1年前から6ケ月前までの間に借主に通知しなければなりません。又、借主の方から、契約期間中に転勤などのやむをえない事情により解約する場合には、解約申入れの日から1ケ月を経過することにより契約が終了するとされています。こうした定期借家契約は、居住用の建物については、当分の間、それまでの契約から定期借家契約への切替えは認められていません。ご質問の方のような店舗兼住宅の場合も同様と考えられます。しかし、事務所などの事業用建物として使用されているものについては、切替えが認められることになります。ご質問の方は、おそらく家主の方で、こうした改正を知つて、切替えを申出ていると思われますので、十分な注意が必要でしょう。。

16.民事再生法について

☆問い
 私は、建築会社を経営しておりますが、このところの不景気により、受注もおもわしくなく、負債も膨らむ一方で、既に億を超える状態です。このまま不景気が続くのであれば、倒産も考えなくてはなりませんが、聞くところによれば、民事再生法という法律があるとのことです。どういう法律なのでしようか。

☆答え
 まもなく20世紀も終わろうとしておりますが、政府の失政もあり、日本の景気の回復は遅々としており、企業の倒産は増え続けております。ことに北海道では、一層厳しい状況です。このような中で、平成12年4月1日から民事再生法が施行され、8ヶ月余りが経過しました。
 この法律は、基本的には事業の再生を図ることを目的としており、役員関係も継続して財産管理権を保有させることに特徴があります。この法律ができてからは、新聞報道でもおわかりのとおり、大手企業の倒産にも利用されております。しかし、北海道では現在までに12件と、1ケ月に1.5件の割合でしか申立がありません。その大きな理由は、裁判所に納める予納金の高さにもあると思います。ご質問の億を超える負債の場合には、500万円前後を目安としているようです。この予納金は、公告などの費用、監督委員、管財人、保全管理人の報酬等に使用されるもので、裁判所が事情を考慮して決定し ます。
 手続としては、破産の原因たる事実が生ずるおそれのある場合に、債務者(倒産する企業)又は債権者が申立できます。申立があったときは、裁判所は、手続開始前に仮処分、競売手続の中止などの保全処分をなすことができます。再生手続が開始されると、債権届出が行われ、これに基づき、再生債務者(倒産企業)は再生計画を立案し提出することになりますが、再生計画は、あくまでも事業を再生させるということが基本方針となります。したがって、自力再建が困難であれば、営業譲渡をしたり、スポンサーの資金援助を受けながらの再生計画も可能となります。再生計画案は、出席債権者の過半数で、議決権の総額の2分の1以上の賛成により可決されるものとされており、従来の和議手続が4分の3以上だつたのに比べ、緩和されています。可決された再生計画は、裁判所の認可決定により効力が発生します。計画がそのとおり実行されれば、終結決定がなされますが、途中で挫折した場合には、再生計画を変更するか、再生手続の廃止や取消、さらには牽連破産に移行することになります。
 以上のように、この制度の特徴は、従前の役員が業務を遂行できますので、営業の継続が容易になっているところにあります。しかし、不誠実な役員には、責任を追及する制度も導入されています。なお、前述した予納金ですが、負債が億までいかない場合、札幌地裁は東京地裁に準じる扱いをしており、負債額が5,000万円未満ですと200万円前後、5,000万円から1億円未満ですと300万円前後とされているようです。

17.所有者の変更と保証金の返還

☆問い
 当社は、A社の所有するビルにテナン卜として入居し、契約の際に、敷金6か月分と保証金300万円を預けました。契約期間は5年間です。契約では、2年経過して明渡すときは敷金は直ちに返還するが、保証金は5年間据置き6年目から毎年60万円ずつ5年で返還する。ただし、期間満了のとき、当社が明漬しを完了したときは直ちに保証金も返還すると定められておりました。ところがA社は倒産し、ビルも競売され、別のB社が新しい所有者となりました。当社は、その後も入居しておりましたが、5年の期間が来たので、ビルを明渡すことにし、保証金の返還をB社に申し入れました。しかし、B社はA社に請求してくれといって返還に応じてくれません。

☆答え
 ビルにテナントとして入居する際、とくに新築のビルでは、敷金のほかに保証金を要求されることが多くみられます。この場合、保証金は大家がビルを建築するため借り入れた金銭の返済にあてるための建築協力金といった場合が多いと思います。どルの所有者が倒産し、競売されて所有者が変わっても、賃借人としては、新所有者に対し、前の大家と全く同じ契約内容を主張でき、賃料も従前どおりの金額を支払えばよいのです。敷金についても、大家にとって、借主が賃料の支払を滞納したり、物件を破損したりした損害の担保のために差し入れさせるもので、賃貸借契約と一体となているわけですから、当然、新所有者に引き縦がれ、新所有者が返還する義務を負うことになります。ところが、これに対し保証金は賃貸借契約とは別個の金銭消費貸借契約と考えられますので、一枚の契約書で契約したとしても、その中に2つの契約が含まれていると考えられるのです。したがいまして、当然には新所有者には引縦がれず、新所有者は返還を拒否することができるのです。裁判例も、このような考え方に立っております。ご質問の場合も、B社には返還を請求できないことになります。そうなると、多額の保証金を預ける賃借人としては、このような場合に備えておく必要があります。通常の貸金と同じと考えることになり、大家が会社の場合ですと、取締役個人に連帯保証人になってもらう、あるいは担保のためビルに抵当権を設定してもらうなどの方法があります。しかし、現実には、ビルを借りる側ですから、それらを要求することは難しいかもしれません。据置期間を2年から3年に短くしてもらうのも一つの方法でしょう。

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